前編記事『千葉県に盗撮マニアが「聖地」と呼ぶ駅があった…恐るべき「盗撮ステーションの実態」』の続きである。
【写真】千葉県に盗撮マニアが「聖地」と呼ぶ駅があった…「盗撮ステーション」の実態
西船橋駅が「聖地」と呼ばれる理由は二つある。
ひとつは多くの女子高生が通学路として駅を利用すること。そしてもうひとつは、駅の構造的に盗撮をしやすい場所が非常に多いことだ。
西船橋駅の改札は2階にあるのだが、京葉線・武蔵野線を利用する場合は3階のホームまで上らなくてはいけない。このときに使うエスカレーターが20メートルと長いため、盗撮時間を確保することができる。
加えて、2階には様々な売店が並ぶ広いスペースがあるため、盗撮犯にとってターゲットを見定めるちょうど良い待機場所になっている。ある警察関係者はこう語る。
「残念ながらいくら警告文や盗撮抑止ミラーなどの対策をしても、盗撮被害が起きてしまっているのが現状です」 これほどの対策があっても、なぜ盗撮は減らないのか。その理由を解明するには、盗撮犯たちの実態を知る必要がある。
ここ数年は「盗撮グッズ」の小型化・高性能化が著しい。ペンや腕時計、充電器、メガネに偽装した巧妙なカメラが次々と登場。通信機能がついているものも多く、小型カメラで撮影しながら、スマホでズーム操作を行うことも可能だ。こうした手口は無音で行われるため、気づくのは難しい。
しかも、こうした商品はインターネット上で安価で簡単に入手できる。10年ほど前は2万~3万円ほどしたものが、中国製の廉価版が普及したことで3000円もあれば買えてしまう。
そして、盗撮という性犯罪が備える「特殊性」こそ、盗撮犯が後を絶たない原因と言えよう。
これまで盗撮などの性被害に関する刑事事件を700件以上も担当したことがある河西邦剛弁護士が、衝撃の実態を語る。
「捕まる人の大半は、30~100回くらい盗撮した経験があります。なかには1000回以上も盗撮して、ようやく捕まる人もいます」 かつて私の取材に「盗撮は誰にも危害を与えない『安心・安全な趣味』なんです」と話した盗撮犯がいたが、盗撮は対象者に気づかれにくく、現行犯で捕まることがきわめて少ない。統計上の検挙件数は氷山の一角なのだ。そして、捕まらないからこそ彼らの行動はエスカレートしていく。
その典型的な例が、盗撮動画の販売だ。
インターネット上には「盗撮サイト」と呼ばれるホームページがいくつも存在していて、そこでは盗撮動画が販売されている。いわば、盗撮犯による「闇マーケット」だ。
この闇マーケットの市場規模は100億円をくだらないとされている。昨年2月に迷惑防止条例違反で逮捕されたある盗撮犯は、動画販売で約1億5000万円も売り上げていた。たったひとりで、ここまでの大金を得られるのだ。
当然、警察は「闇マーケット」の存在を知ってはいるが、海外にサイトのサーバーが置かれるなど手口が巧妙なため、捜査の手が及びづらい。
こうしたサイトにおいて、動画を販売する盗撮犯は「神様」「カリスマ」などと惜しみない賞賛を浴びる。それどころか「あなたに憧れて、私も(盗撮を)始めました」というコメントもある。教祖のような扱いを受けた結果、罪悪感は薄れてしまい、もういちど褒めてもらうために盗撮を繰り返していくわけだ。
現代ビジネス - 2024/07/15 07:00