盗撮を防ごうと、駅のエスカレーターに鏡を設置する取り組みが広がっている。女性が鏡をのぞき込んで自身の背後を見ることで、後ろから近づく盗撮犯を思いとどまらせる狙いだ。人間の行動心理を利用し、効果が出ているという。
【写真】広範囲を映すことができる特殊な鏡=さいたま市の浦和美園駅、コミ―提供 1日に平均約6万人が利用するつくばエクスプレス秋葉原駅(東京都千代田区)。ホームから改札に向かう長さ27メートルのエスカレーターの側壁には、縦30センチ、横20センチの鏡がほぼ等間隔に6枚貼られている。鏡の隣には「盗撮に注意!」と書かれたステッカーもある。
設置したのは警視庁万世橋署。大学への通学で駅を利用している女性(20)は「鏡があるとふと見てしまい、気をつけようという気持ちになる」と話した。
エスカレーターに鏡を設置する取り組みは大阪府警から始まった。府警曽根崎署と警察庁科学警察研究所が昨年3月、JR大阪駅(大阪市北区)に直結するビルのエスカレーターに、鏡と「背後盗撮に注意」と書かれたステッカーを設置。設置前後の30分間で、エスカレーターに乗った人が横や背後を気にした割合を比較する実験をしたところ、設置後は約10倍になった。
■大阪駅 鏡を導入後、被害なし 曽根崎署の管内で確認された盗撮事案は例年、薄着になる6~8月は他の月の2倍以上になる。鏡を導入したエスカレーターでは、その後に被害の確認はないという。
鏡の導入を曽根崎署と企画した科警研犯罪行動科学部の島田貴仁室長は、犯人側に盗撮をちゅうちょさせるため、どうやって女性に振り返らせるかを考えたという。「人は鏡があればのぞき込む。その行動心理を利用した」 取り組みは各地に広がった。昨年10月以降、警視庁のほか神奈川、千葉や愛知の各県警で導入された。千葉県警船橋署は昨年11月に西船橋駅(船橋市)に設置。同駅では2022年に23件の盗撮被害が確認されたが、23年は17件、今年は7月末までで5件と、徐々に減っているという。
朝日新聞デジタル – 2024/08/23 12:00