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鹿児島県警「5月初めまで本部は把握していない 報告がなかった」。だが枕崎署は3月中旬に“元署員が被疑者の可能性が高い”と「容疑者浮上報告書」を作成していた 元枕崎署員盗撮事件

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 鹿児島県警の前生活安全部長が「野川明輝(前)本部長が隠蔽〔いんぺい〕しようとした」と主張する元枕崎署員の盗撮事件を巡り、署が3月中旬に作成した「容疑者浮上報告書」には、元署員の実名や動向が記され、「捜査結果から被疑者の可能性が高い」と結論付けていたことが19日、南日本新聞の取材で分かった。本部が逮捕する2カ月前に作られた書面だが、県警はこれまでに「5月初めまで本部は把握しておらず、報告がなかった理由を署に確認していない」と説明している。

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 報告書は3月19日付。元署員の裁判記録や取材によると、犯行現場近くの防犯カメラ画像などから、捜査対象車両として署の公用車が浮上。署は本部警務部に照会し、県内で登録のある同種車両53台のうち39台が県警所有で、枕崎市内には同署の1台しかないと確認した。「走行経路をもれなく追跡できていないが、他の車両と入れ替わる可能性は限りなく低い」ことを理由に、「署の車両の可能性が極めて高い」とした。

 署の防犯カメラには、発生時間帯に元署員が1人で公用車に乗る状況が記録されており、「犯行可能な動向が認められることが明らか」とも判断。勤務表からも単独だったことを確かめた。捜査日誌には元署員による「情報収集」との記載があるが、それに付随する報告書は存在しなかった。

 被害女性は「赤色系のスマートフォンを見た」と証言。署は、犯行日の約7カ月前と数日後のいずれにおいても、元署員のスマホのカバーが赤色系だったことを確認し、「犯行に使ったスマホの特徴と矛盾しないことが明らか」とした。

 事件は2023年12月19日に発覚。同22日に野川前本部長が報告を受けた当初から元署員の関与が疑われていたが、本部長指揮に切り替えず「署で捜査を尽くし、教養(研修)もせよ」と指示していた。県警によると、署が本部の指示を誤って受け取り、2日間ほど捜査が中断。一連の指示記録を文書に残しておらず、捜査中止中にも元署員は再び盗撮を1回していた。

 本部は5月上旬、署から容疑者浮上報告書を引き継ぎ、同13日逮捕。3月の報告書作成から逮捕するまでの間について、県警は「より強い証拠を見いだすべく、引き続き捜査していた」とし「捜査が遅いとの批判は真摯〔しんし〕に受け止めるが、(前生活安全部長の主張により)事件を隠せなくなったから捜査したという事実はない」と説明している。

■元枕崎署員の盗撮事件  2023年12月15日に女子トイレに侵入し県内の30代女性を盗撮したとして、県警は24年5月13日、建造物侵入と性的姿態撮影処罰法違反(撮影)の疑いで枕崎署警備課の巡査部長=当時=を逮捕した。6月に停職3カ月の懲戒処分とし、巡査部長は依願退職した。少なくとも80回盗撮したとされ、このうち23回が罪に問われた。9月、鹿児島地裁は懲役2年執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。

南日本新聞 - 2024/11/20 06:00


 

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