「NHKスペシャル」や「クローズアップ現代」などで、NHKは“未成年者の性被害”の問題に力を入れて報道している。SNSを使った分析など最新の調査報道を駆使し知られざる事実を掘り起こしたほか、被害が広がる背景に巨大プラットフォーム企業の体質があると、規制の必要性にまで踏み込み、問題提起している。(水島宏明・ジャーナリスト/上智大学文学部新聞学科教授) 【画像】「パンツとかまったく見えない子のほうがよくて…」NHK取材班が潜入した”オフ会”の模様 ***
6月19日、参議院本会議で“日本版DBS”を導入する法案が可決され、成立した。子どもに接する仕事に従事する際には、その人物の性犯罪歴を照会できるようにする仕組みで、日本では画期的といえる制度だ。このタイミングでのNHKの一連の報道は、日本版DBS導入を受けてのものと推察できるが、その第1弾ともいえる番組が、6月8日放送の「NHKスペシャル」の「調査報道・新世紀 File3 子どもを狙う盗撮・児童ポルノの闇」(前編)だった。
昨年8月に大手学習塾・四谷大塚で、塾講師の男が小学生の教え子たちの下着を盗撮し逮捕された事件。男は、盗撮した動画をSNSで共有していた。NHKの取材班は男と手紙でやり取りを行い、「盗撮などの犯行はSNSのコミュニティの存在に後押しされた」という証言を引き出した。
実際にそれらのサイトを覗いてみると、子どもたちを盗撮した性的な動画や静止画が次々とアップされていた。チャットには「JKのスカートの中には夢と希望が詰まっています」「可愛いし、生足美味しそうでした」「~~(盗撮された未成年)のことレイプしたい人いるのかな」「はあーい」などのやりとりが続く。
この元塾講師に限らず、中学校の教師、児童相談所の職員、警察官、自衛官らが未成年への盗撮行為やわいせつ行為などで逮捕される事件が相次いでいる。その背景に広がるのは、子どもを性的な搾取の対象としたSNS上のこうした「闇」だ。
「調査報道新世紀」シリーズは、従来型の調査報道よりも“一歩先を行く新しい手法”を使って、知られざる事実を明るみに出そうとする番組群である。これまでのNHKの報道番組を超えた試みが見られる。
デイリー新潮 - 2024/06/26 06:11