福島県警が2024(令和6)年に摘発した盗撮は52件に上り、2019年以降で最多になった。2023年に改正刑法の施行で性的姿態撮影処罰法違反(盗撮罪)が新設され厳罰化されたが、行為に及び立件される者は後を絶たない。県警は巧妙な手口により被害に気付かず、羞恥心から泣き寝入りするケースが多く、実態把握が難しいとしている。埋もれている犯罪を積極的に事件化する方針で、「不審に感じたら警察に相談してほしい」と訴える。
盗撮は主に都道府県の迷惑行為等防止条例違反で取り締まってきた。しかし近年、被害が相次ぎ、国は法整備を進めた。2023年7月に施行された性的姿態撮影処罰法違反(盗撮罪)の法定刑は3年以下の懲役または300万円以下の罰金。最大で1年以下の懲役または100万円以下の罰金だった迷惑行為等防止条例違反より大幅に厳しくなった。
県内と全国の摘発件数は【グラフ】の通り。県内では昨年、性的姿態撮影処罰法違反(盗撮罪)で47件、県迷惑行為等防止条例違反で5件を摘発。裁判所書記官や中学校教諭ら高い職務倫理が求められる公務員も含まれた。52件のうち、スマートフォンを用いたのは6割の31件だった。
県警によると、発生場所は大型商業施設、階段やエスカレーター付近など。スマホを女性のスカート内に差し向ける手口が大部分を占め、未成年が巻き込まれることも。インターネット上に映像が流出するケースもあった。
県警は摘発が最大の抑止につながるとしている。しかし性的な被害であるため、届け出ない人も多いとみている。ためらわずに申告するよう、一線署と連携して駅周辺などで広報活動を展開している。県内のある商業施設は、防犯カメラで不審な人物を確認した際、警察に情報を提供しているという。
機器の進化で被害が表面化しない場合もある。カメラが小型化し、眼鏡や腕時計、ペンといった身の回りの物に偽装することが可能となった。さらにスマホ搭載カメラの性能は向上し、暗い場所でも撮影できるようにもなっている。
県警本部少年女性安全対策課の担当者は「盗撮を疑われる不審者を見かけた時には、被害者ではなくても警察に連絡してほしい」と呼びかけている。
■安易に興味抱き罪の意識希薄に 識者 盗撮を犯した若者らの更生を支援している犯罪心理学者の中村大輔さん(41)=神戸市=は「スマホで写真を撮る行為が日常的になり、罪の意識が薄れている」と分析する。
きっかけはさまざまあると指摘。ニュースで事件を見聞きしたり、インターネットで盗撮画像を目にしたりして興味を抱き、盗撮に手を染めるという。「ばれないだろう」と安易に考えていると推し量っている。
盗撮する人の低年齢化に懸念を示し、家庭や学校で指導する必要性を説く。家庭では、性的な話題を避ける傾向があるが、「タブー視せず、話し合いやすい環境が求められている」としている。
福島民報 - 2025/01/19 11:03