鹿児島県警枕崎署の巡査部長=依願退職=がトイレに侵入して女性を盗撮したとして、性的姿態撮影処罰法違反(撮影)などの罪で起訴された事件を巡り、県警内部の誤った指示で捜査が一時中止していた間にも、巡査部長が盗撮を1回していた疑いがあることが23日、県警本部への取材で分かった。県警は「当時は被疑者として特定されておらず、仮に捜査を続けていたとしても防げるものではない」と説明し、対応に問題はなかったとの認識を示している。
【検証・鹿児島県警巡査部長盗撮㊤】警官関与の疑いがあれば「本部長指揮」のはずが当該所轄事案 捜査中断…異例続きの捜査指揮に、現職・OB捜査員からも「常識では考えられない」といぶかしむ声
盗撮事件は2023年12月19日、被害者が署に相談して発覚。捜査の初期段階から署員の関与が疑われていた。野川明輝本部長は同22日に報告を受けたが、本部長指揮ではなく「署で捜査を尽くし、教養(研修)もせよ」と指示した。その理由について「被害者が犯人を目撃しておらず証拠が乏しい」「(教養実施は)万が一署員が犯人であれば、立件するまでに同様のことをさせてはいけないと考えた」などと説明している。
県警などによると、24年5月13日に巡査部長を逮捕し、その後の調べでスマートフォンから23年12月23日に撮影した盗撮画像が見つかった。この日と翌24日の両日は、野川本部長の指示を前首席監察官が前署長に伝える中で「捜査は中止」との誤解が生じていたため、捜査は止まっていた。
巡査部長は19年9月以降、少なくとも80回盗撮したとして懲戒処分を受けた。処分理由には今回の事案も含まれている。「盗撮」などをテーマに設け、23年12月下旬に全署員を対象に実施した教養後に限れば、逮捕までの4カ月半の間に一度も盗撮をしていない。
県警本部は23日の南日本新聞の取材に対し「昨年12月23日の時点では(巡査部長が)被疑者として特定されていた訳ではない。捜査を継続中であったとしても別の場所での将来の犯行を防止できるものではない」と回答した。
一連の経過を巡っては、前生活安全部長の被告(60)=国家公務員法(守秘義務)違反罪で起訴=が裁判手続きの中で、この事件を含めて「野川本部長が県警職員の犯罪行為を隠蔽(いんぺい)しようとしたことが許せなかった」と主張した。
県警はこれまでに、捜査中止と署に伝わった当時、署内からも「隠蔽にならないか」などと懸念する声が上がっていたと明らかにしている。捜査開始から逮捕まで約5カ月かかっていることについては「捜査が遅いとの批判は真摯(しんし)に受け止めるが、(被告の告発を受け)事件を隠せなくなったから捜査したという事実はない」としている。
南日本新聞 – 2024/07/24 06:03