甲子園のアルプススタンドで応援するチアリーダーの盗撮被害が近年、問題となっている。開催中の第106回全国高校野球選手権大会でも、各出場校がさまざまな対策をしている。中には盗撮が一因でチアリーダーを設けない学校もある。
【写真】対策をする各校のチアリーダー ◇「被害を出さないように」 大会第3日(9日)の第1試合。初出場で勝利した新潟産大付の三塁側アルプス席には在校生や卒業生、野球部OBらが集まり、熱のこもった応援が繰り広げられた。だが、その中にチアリーダーの姿はなかった。
新潟産大付は元々、チアリーディング部がないという。新潟大会では8人の吹奏楽部員の演奏が応援を盛り上げた。
甲子園初出場が決まり、即席のチアリーディングチームを作る案もあった。しかし、野球部の松木洋充部長によると「さまざまな問題を考慮して、(チアリーダーは)なしになった」。最終的には「甲子園仕様」の応援として、近隣の学校などから楽器の演奏者を募り、吹奏楽部を「補強」して臨んだ。
松木部長は「夏休み期間中なので、(部活動ではない)チアの練習のためだけに生徒に集まってもらうわけにはいかない。(甲子園出場が決定してから本番までの)期間が短いなど課題が多かった」とした上で、「最近は盗撮被害が問題視されている。他の学校がいろいろな対策や工夫をしていると聞くので、(チアリーダーを設けないことで盗撮の被害者を)出さないようにとの思いもある」と説明した。
◇半ズボン、掲示… 進む自衛 一方、5年ぶり出場で新潟産大付と対戦した花咲徳栄(埼玉)のアルプス席では、ユニホームタイプとスカートタイプを着用するチアリーダーが混在していた。元々はスカートタイプを着用していたが、2年前から岩井隆監督の提案で、下が半ズボンのユニホームタイプも着用するようになった。ユニホームタイプのデザインは野球部と同じという。現在は試合によって二つのタイプを使い分けたり、混在させたりしている。
ダンス部顧問の加藤奈津希教諭は「華やかさや生徒たちの憧れも考えて、スカートタイプも着用している」と話す。
しかし、埼玉大会などで盗撮されていると感じたことも多く、「両方交ぜて着用している場合は、ユニホームタイプを着ている生徒でスカートタイプを着た生徒を挟んだり、列の先頭や通路側にはユニホームタイプの生徒を配置したりするようにしている」という。
他校の対策を参考に、守備の時間などで座る際には膝と肩に大きめのタオルをかけたり、腰にタオルを巻いて移動したりするなどの対策をしている。
最近は保護者などから「盗撮ではないか」と連絡を受けることも多く、その場合は撮影者に声をかけるようにしている。ただ、加藤教諭は「明らかな盗撮行為と分かることは少ない」と頭を悩ませている様子だ。
甲子園常連校も盗撮からの自衛に取り組んでいる。2度の春夏連覇の経験がある大阪桐蔭、今春の選抜大会で優勝した健大高崎(群馬)はチアリーダーに半ズボンを導入している。前回大会4強の神村学園(鹿児島)は関係者が「盗撮禁止」などと書かれたボードを掲げていた。
他のスポーツでも盗撮問題が起きており、陸上や競泳などの競技会場では撮影禁止の案内を掲示したり、関係者の見回りを強化したりするなど対策が進んでいる。日本オリンピック委員会(JOC)や全国高校体育連盟など7団体は2020年11月、共同で声明を発表し「アスリートの盗撮、写真・動画の悪用、悪質なSNS投稿は卑劣な行為」と撲滅を呼びかけている。【磯貝映奈】
毎日新聞 – 2024/08/12 08:00